「『真主齧上目(しんしゅげつじょうもく)は、遺伝子配列解析とレトロトランスポゾン・マーカーのデーターに基づく哺乳綱の上目で、ネズミ目、ウサギ目、ツパイ目、サル目、ヒヨケザル目からなる』という説明は、遺伝子配列解析をしたとき、配列内にあるレトロトランスポゾンが哺乳類の系統を調べるときの目印になるという理論に基づいて書かれています。」

「そういうことなのでしょうが、『トランスポゾンつまり「可動遺伝因子」の一種であり、多くの真核生物組織のゲノム内に普遍的に存在する』という説明が理解できないのですが」と町会長。

「『ゲノム』については、デジタル大辞泉の解説に、『現代主流となっている分子生物学的解釈によれば、ある生物種を規定する遺伝情報全体のこと。遺伝情報はすべて遺伝子を構成するDNA(デオキシリボ核酸)またはRNA(リボ核酸)の塩基配列で記述される。従来の遺伝学においては、その生物種が生きていくために必要不可欠な遺伝子が収められた染色体の一組を指し、生物種によって固有の染色体の基本数がある』という説明があります。」

「分子生物学で『ゲノム』と言うと、『ある生物種を規定する遺伝情報全体のこと』なのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。分子生物学が発達したため、定義が変わってきています。」

「そこまでは理解しましたが、『トランスポゾンつまり「可動遺伝因子」』という用語が理解できないのですが」と町会長。

「国立研究開発法人科学技術振興機構の【用語の説明】に、『レトロトランスポゾン(レトロウィルスとの関係):細胞内を動き回る動く遺伝子をトランスポゾンというが、これにはDNAで複製するDNA型とRNAから逆転写でDNAを作るRNA型の2種類があり、後者をレトロトランスポゾンという。レトロトランスポゾンの中にも色々な種類があるが、今回の話しに出てくるLTR型のレトロトランスポゾンは、エイズや白血病等の原因となるレトロウィルスと非常に似た構造をもっている。すなわちレトロウィルスはRNAを鋳型にしてDNAを逆転写し、感染細胞のゲノムに入り込む性質をもったウィルスである。レトロトランスポゾンは細胞外に出て感染する能力はないが、ゲノム中に元の遺伝子を残しながらコピーが他の場所に入り込むため、ゲノム中に蓄積して行く。ゲノム解析の結果、哺乳類のゲノムの1/3はレトロトランスポゾン由来のDNAの残骸からなっていることが明らかになっている』という説明があります。」

「『逆転写』と言いますと?」と町会長。

「Thermo Fisher Scientificの『逆転写:概説』に、『元来、分子生物学におけるセントラルドグマは、まずDNAがRNA に転写され、次にそのRNAがタンパク質に翻訳される、というものでした。しかし 1970年代、二つの研究チーム、1つはウィスコンシン大学のハワード・テミン率いるチーム、もう1つはマサチューセッツ工科大学のデビッド・ボルティモア率いるチームが、それぞれ別々にレトロウイルスと呼ばれるRNAウイルスの複製に関与する新しい酵素を同定したことでそれまでのセントラルドグマに異議が唱えられることになりました。これらの酵素は、ウイルスのRNAゲノムを相補的なDNA(cDNA)分子に変換し、宿主のゲノムへと組み込ませることができます。これらはRNA依存性DNAポリメラーゼであり、逆転写酵素と呼ばれます。なぜなら、セントラルドグマであるDNAからRNAへの流れとは対照的に、これらはRNAをテンプレートとしてcDNA分子へと転写するからです。1975年、テミンとボルティモアは逆転写酵素の同定という先駆的な功績によってノーベル生理学・医学賞を受賞しました(同時にレナート・ドゥルベッコも腫瘍ウイルスに関する研究で受賞しています』という説明があります。」

「『セントラルドグマ』と言いますと?」と町会長。

「ウィキペディアの『セントラルドグマ』に、『セントラルドグマとは、遺伝情報は「DNA→(転写)→mRNA→(翻訳)→タンパク質」の順に伝達される、という、分子生物学の概念である・・・セントラルとは中心、ドグマとは宗教における教義のことであり、セントラルドグマは、「分子生物学の中心原理」または「生物学の中心教義」と呼ばれることがある』という説明があります。」

「なるほど。通常は、DNAからRNAに転写され、次にそのRNAがタンパク質に翻訳されるのに対し、RNAからDNAに転写されるので、『逆転写』と呼ばれるのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「レトロトランスポゾンのRNAはタンパク質への翻訳とは関係がないということですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

2021/2/15

<イノシシ後記35>
ソーラーライトは、アマゾンの購入記録を見ると、去年の10月の初めの頃、栗林に5つ設置している。その内の4つが分離型に加工したものだった。

夕方暗くなってから、息子に仕掛けを見せようとして、栗林の中に入ろうとした。すると、栗林の北西の隅でドスの効いたイノシシのうなり声が聞こえた。『庭はあきらめたが、夜の栗林は俺たちのものだと主張しているのだな』と思った。

つい最近まで、僕が暗くなってから栗林に入り、2,3メートルの距離まで近づいても、うなり声は出さなかった。人間は唸り声を出さなければ、イノシシがいるのに分からないことに気が付いたからだ。庭に入れなくなったイノシシは、その代わりに、夜の栗林を占有しようとしているのだ。

イノシシとの距離は30メートルくらいだ。僕はイノシシに向かって、つかつかと10メートルほど進み、新しく設置した一体型のソーラーライトのセンサーが作動する範囲に入った。すると、2つのソーラーライトが同時に点灯して、突然、あたりが明るくなった。ソーラーライトの光量は2000ルーメンを超えていた。

北西の隅で、『ギャッ』という悲鳴が聞こえた。暗くて分からなかったが、悲鳴から2頭いたことが分かった。推定した通り、暗視スコープをかけて偵察に行ったら、突然、照明弾を落とされたような状態になったようだ。

それ以来、栗林にイノシシの気配がない。もしかしたら『イノシシ後記』も、これで終わりかもしれない。<終わり?>

2024/2/2